16使えないヤツ

　
朝から開いてるのはあのパン屋だけ。

やりたくはないが背に腹はかえられない！

ここまできて、後戻りできない。

「いらっしゃいませ～」

「おはよございま～す」

朝早くから笑顔で迎えてくれるパン屋さん。

ショーウィンドウにも焼き立てのパンが並び

いい香りが店内にあふれている。

店内に足を踏み入れてレジを探す。

レジは正面の10メートルほど先で恰幅のいいおねーさんが

にこやかにこちらを向いている。

客は誰もいない。

用があるのは、パンでも、恰幅のいいおねーさんでもない。

レジだ！

焼き立てのパンに目もくれず、落ち着いてレジに近ずく。

脇には朝刊を挟んで、短パンでサンダル姿。

まさかこんな格好でおいが、これから何をしょうとしてるか

察する人間はいないはず。

（大丈夫、いける！）

心の中で、突き刺さる視線を無視して自分の背中を押す。

「あの～」

「はい、いらっしゃいませ～」

おねーさんの笑顔が自分の心にブレーキをかける。

アレを手の中にしっかり握り締めて、意を決する。

目の前に握り締めた500円玉を見せて

「これ、たばこの販売機で使えないんで他のと替えてもろちよかですか？

なんべんいれたっちゃ、おてち来て使えんけん」

Ｃ＝　（－。－　）　フゥー

いやな顔もせず、交換してくれた。

ほんなこて、500円玉はつかえん！

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